イボとは
イボとは皮膚から盛り上がった状態のものですが、一般的なイボは尋常性疣贅あるいはウイルス性疣贅と医学的に呼ばれます。これは皮膚にできた小さなキズにウイルスが感染して発生するもので、とくにお子様の手指や膝の裏などにできやすく、高齢の方ではあまりみられない傾向にあります。多くは自然に治癒しますが、中には治癒するまでに数カ月以上かかるものや、多発したりするものがあります。
同じくウイルス性のイボとして、水イボと呼ばれるものがあります。これは医学的には伝染性軟属腫というもので、乳幼児から保育園、幼稚園、小学校に通うお子様によくみられ、感染力が強いのが特徴です。
このほかイボと言われるものとしては、ウイルス感染によるものとしては若い女性に多いと言われる扁平疣贅、掌や足底にできるミルメシア、主に性交渉で感染する尖圭コンジローマなどがあります。また加齢や紫外線が関係していると考えられているものとしては、脂漏性角化症(老人性イボ)や、摩擦も要因となるスキンタッグ(軟性繊維腫)などがあります。
当院では、「イボ」の診断を丁寧に行い、通常のイボであれば液体窒素での冷凍凝固や飲み薬による治療を行うなど、原因や症状に応じた診療を行っています。気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
原因
ウイルス性のイボ(尋常性疣贅)に関しては、ヒトパピローマウイルスというウイルスの感染によって発症します。ヒトパピローマウイルスには様々な型がありますが、通常のイボは2型や57型などのウイルスが原因となります。ヒトパピローマウイルスには尖圭コンジローマや子宮頸がんの原因となるものもありますが、これらは別の型で、イボの原因となるウイルスとは関係のないものです。
また水イボ(伝染性軟属腫)は、伝染性軟属腫ウイルスに感染することによって発症します。イボも水イボも、接触することで皮膚や粘膜の小さな傷からウイルスが感染するため、皮膚の別の場所や、ほかの人に感染する危険性があります。イボを触った手で、別の場所を触らないようにし、タオルや食器、道具などはなるべく共有しないことが予防につながります。お子様では、皮膚同士が接触しやすいプールでうつる場合も多くみられます。ただし水を介しては感染しませんので、プールに入ること自体は問題ありません。
症状
イボ(尋常性疣贅)は、発症すると数㎜~1㎝程度の小さな皮膚の盛り上がりが現れます。ほとんどの場合、かゆみや痛みはありません。一つだけ現れることもありますが、多数現れることもあり、それらが集まって融合し、皮膚に広がることもあります。
水イボでは、中央が窪み、つやのあるブツブツとしたものが現れます。つぶすと白く粘性のある内容物が絞りだされ、それが別の場所に付着すると伝染し、同様のブツブツが発生します。やはり多くの場合、痛みやかゆみはありません。
通常イボは、ウイルスへの感染から3~6カ月かけて皮膚の細胞が異常に増殖し、目に見える状態になります(水イボでは14~50日)。傷がつきやすい手足や,アトピーや湿疹でひっかきやすい肘やわきの下の皮膚などに発症しやすくなっています。
またイボは足の裏にできることも多く、その場合、足底疣贅(ミルメシア)と呼ばれます。足底には体重がかかっているため、あまり盛り上がらず、皮膚の奥へ進んでいき、表面は硬くザラザラとしている場合があります。見た目がウオノメと似ているため間違われることもあります。ただしそれぞれ治療法が異なり、市販のウオノメの治療薬を使用したり削ったりすると悪化する場合がありますので、皮膚科の診断を受けることをお勧めします。
治療
治療に当たっては、まず視診により診断を行います。典型的なイボの症状であれば、視診によって判断できます。ほかの疾患が疑われる場合は、表面をダーモスコピーと呼ばれる専用のルーペで観察したり、イボの表面を少し削って断面をみたり、病理検査を行うことがあります。
イボの場合、ウイルスに対する免疫がつくことで、その多くは自然に治癒します。なかなか治らない、多発しているといった場合には、-196℃の液体窒素をしみこませた綿棒を患部に当て急激に冷やし、凍らせて除去する「冷凍凝固術」を行います。治療直後は、水疱や血豆ができ、多少痛みもありますが、2週間ほどでかさぶたのように変色し取れていきます。
なお冷凍凝固術は、大きさやウイルス感染の状況によって、複数回の治療が必要になることもあります。その場合、1~2週間おきに繰り返していきます。通常痛みが長く続くということはありません。このほか、角質を柔らかくする塗り薬を使用したり、イボに効果があるとされるヨクイニンという漢方薬を処方したりする場合もあります。
水イボも、ほとんどが半年ほどで治癒しますが、皮膚に広く伝染してしまうこともあります。その予防のために、特殊な形状のピンセットを用いて内容物を圧出し、除去する場合があります。